話をしてくれる子に育てるには?
2019.04.25
私は講師として私立の学校で公演をしたり、区が主催する子育てのクラスに招かれワークショップを担当することがあります。そのような環境のなか、そしてCPIの講座で、子育てに悩んでいるお母さんからお話を伺う機会がたくさんあります。
多くの場合、子どもとのコミュニケーションがうまく取れない、
子どもが話をしてくれない、
話かけても返事がなかなか返って来ない 等々
困っている、心配だという子育ての悩みです。
特に思春期が始まる10~12歳ころから、コミュニケーションが取れずに悩むお母さんが増えてきます。
なぜなら、思春期には自我が芽生え、それまで取っていたコミュニケーションの方法を変える時期に来ているからです。今まで色々と話してくれていた子どもが反抗したり、無視をするようになったり、等、否定的な行動を取るようになります。
そこで思春期に入っても「話をしてくれる子に育てるには」どのような方法で接していくかを、お伝えしていきます。
コミュニケーションのパターンを知る
せっかく子どもが話かけてきた時、皆さんはどのようなコミュニケーションを取っているのでしょうか?
普段はどのような話の聴き方をしているのでしょう?
親は子どもに対して「子どもを何とかしてあげたい」「守ってあげたい」という愛情の思いで、話を聴くというよりもどうしても禁止や命令、決めつけ、アドバイスを使いがちです。
禁 止:「だからいつも〇〇しちゃ駄目って言ってるでしょ。」
命 令:「言った通りにしなさい!!」
決めつけ :「嫌なことをされたのは、あなたにも悪いところがあるんじゃないの?」
アドバイス:「そういう時は、こうすれば良いのよ。」
特にこの「~~してはダメ」、「〇〇しなさい」、という禁止と命令はコミュニケーションの方法として子どもが小さいころからとっているので、習慣的になっているかもしれません。この禁止と命令の方法を思春期になっても続けていると、子どもはどんどん話をしなくなります。
親は子どもの話を最後まで聴かずに、自分が話すことばかりに意識が向く傾向があります。その上に、自分が大人として様々な体験や経験をしているので、子どもが失敗しないように、傷つかないように、先回りをしてつい話し出してしまうのです。
そうすると子どもは自分の話をただ、ただ、聴いて欲しいのに話をさえぎられ、
聴いて貰えないことが続くと「どうせ話を聞いてもらえないから」と、話をするのをやめてしまうパターンになります。
子どもが自分から話をする子に育てるには、まず親が子どもの話を聴く
「聞く⇒耳できくではなく 聴く⇒五感を全て使ってきく」
ことからスタートします。
子どもの話を途中で遮ったりしない
子どもの話を否定せずに、黙って最後まで聴く
途中で良かれと思ってアドバイスをしない 等々
「話をただ、ただ、聴いてもらっている。」
「受け入れてもらっている。」
という安心感を創り出すことが出来れば、結果的に話をしてくれる子になっていきます。
たった3つの方法で子どもが変わる
それでは子どもが安心して話をしてくれる子の親はどんな聴き方をしているのでしょう。
子どもが言っていることを否定せずに最後まで聴いているのはもちろんのこと、ラポール(信頼関係を創る)を創り出すための3つの手法を意識的に無意識的に使っています。
うまくいっている親御さんは無意識にこの手法を使っています。
① バックトラッキング
− 相手の言っている言葉をそのまま返す、キーワードを返す、最後にまとめて返すという手法です。
お子さん:「先週の算数のテストで80点取ったんだ。そうしたら、先生がクラスのみんなの前で褒めてくれたんだ。」
そのまま返す:「先週の算数のテストで80点取ったんだね。先生がクラスのみんなの前で褒めてくれたんだ。」
キーワード:「テストで80点!みんなの前で褒めてくれたんだ!」
まとめて返す:「算数テストで80点取って、全員の前で先生に褒められたんだね。」
② ミラーリング
− 相手の動きと同じ動作をするという手法です。
お子さん:手を動かしながら話す
ミラーリング:鏡に映したように同じ動作をする
③ ペーシング
− 相手のペースに合わせるという手法です。
相手の声のトーン、大きさ、スピード、ボリューム等を合わせる
お子さん:大きめの少し早めの声で話をしている
ペーシング:お子さんと同じ声の大きさ速さで話す
この聴き方をするためには
相手の動きを見る
話の内容をしっかりと聴く
相手の声のトーンや大きさ等、あなたの感覚で感じる必要があります。
この3つの方法で話を聴くと、相手が話を『聴いてもらっている感』があり、会話が増えていきます。
孫に教わったこと
ここで私の体験談をお話します。
私には5歳と2歳の孫娘がいます。
彼女たちが我が家に遊びに来た時の事です。
2歳の孫が廊下のところで『怖い、怖い』と言っています。
廊下の電気も明るくついているし、怖いと思うような変なことは何も見当たりません。
状況を調べた上で『誰もいないし、大丈夫だよ』と説明しても、『怖い、怖い』と言い続けます。
だんだん面倒くさくなっていた私は「決めつけ」モードに入り、
『ほらね、誰もいないでしょ』『だから怖くなんかないよ』『大丈夫、大丈夫』と一つ一つ説得しているところに
5歳の孫がやってきて、
『〇〇ちゃん、怖かったんだね~』と、2歳の妹が言ったことを一言、バックトラッキングをしました。
そうすると下の子は『うん』と言って、もうそれ以上『怖い』と言わなくなりました。
そうなんです。
私が説得しようとしている時には変わらなかったのに、
下の子は『怖い』という気持ちを受け取ってもらえたら、気が済んだのでした。
私はラポールの大切さを皆さんに教えているのに
2歳の孫に対して、無意識に「決めつけ」モードに入っていて安心させようと、説得しようとしていた自分に気づきました。
なんと、孫にラポールの基本を教えられた瞬間でした。
そして、私の娘が私のやっていたことをモデリング(同じように真似てやること)して、自分の子どもと良好なコミュニケーションをとっていると話をしてくれました。
私が家族に伝えていたコミュニケーションがうまくいっている証として、うれしく思いました。
5歳の孫は保育園であったことを娘によく話してくれるそうです。
嬉しかったことも悲しかったことも
下の子が生まれた当初はいらいらして下の子にあたることもあったようですが、
お母さん(娘)が子どもの状態をバックトラッキングやミラーリング、ペーシングを使って聴くことをずっと続けていました。そのおかげでいらいらがとれ、下の子にも優しくなったと言っていました。
話が聴ける子は、話をしてくれる子に成長していきます。そのためには親として、話の聴き方のお手本を子どもに見せる必要があります。
その孫もこの四月から一年生になりました。
学校でも先生の話をしっかりと聴いているようです。
良好な人間関係を築くために
このようにラポールを作り出すための3つのコミュニケーションの方法は
話をしてくれる子どもを育てることに限らず、年令にかかわらず、小さいお子さんからお年寄りまでどの年齢層にも使うことができます。
良好な人間関係を築く基本です。
この方法を実践したお母さんから、「一ヶ月ほど話を最後まで聴くこと、ラポールを意識してやり続けました。夕食の時、いつも娘は黙って食べてすぐ部屋に消えてしまっていたのが、自分から話すようになりました。食卓に座っている時間が長くなりました。」と嬉しい報告を頂きました。
この3つ方法が無意識で使えるようになるためには練習が必要です。
最初はぎこちなくても、練習を積むことで必ずできるようになります。
是非マスターして使えるようになって下さい。