脳と心の原理原則 ~潜在意識の活用法~
2017.09.08
みなさんは、脳と心の関係をご存知でしょうか。私たちの脳と心にはいくつかの原理原則があります。そのうちの一つが「脳と心の働きは、言葉による影響を強く受け、そして言葉に現れる」です。
NLPは、言語学の研究成果を基に開発されました。NLPが基にした言語学は、人間が生まれながらにして、言語習得や言語使用を可能にしている知識のあり方を解明することを目標にし、しかもその言語知識を心の仕組みの一環として捉えるような心との繋がりを重視している言語学です。
私たちは、何かを考えたり、あるいは何かを体験した時に言葉で表現をします。これは、言い換えると「心の状態という自動車」を、脳の中で働く「言葉というハンドル」で、目的地に向けてドライブするようなものです。言葉のハンドルの使い方で、心という自動車は快適にドライブする事も、急ハンドルで車酔いする事もあります。
例えば、経営陣の前でのプレゼンを翌日に控えた二人の若手男性社員がいるとしましょう。プレゼンする内容は全く同じです。前日、それぞれ準備を終えたところ、Aさんは「よし、これでいける。社長喜ぶぞ。明日が待ち遠しいな~」と言葉にし、Bさんは「これで大丈夫かな。失敗したら社長に怒られるの嫌だな。明日が来なければ良いのに」と言葉にしました。さて、どちらが成功するかは一目瞭然ですね。さらに言えば、Aさんはぐっすり眠れるでしょう。内容が同じであるなら、NLPではAさんの言葉使いをする事をおススメします。
NLPではAさんの言葉使いを「到達型の言語パターン」と呼び、Bさんの言葉使いを「問題回避型の言語パターン」と呼びます。どちらのパターンが優れているということはありませんが、上記の状況では到達型のパターンが効果的です。問題回避型は、品質管理、会計監査、医師などミスや漏れが重大な問題になるような職業の方に必要な言語パターンです。「失敗はないか?」「品質は保たれているか?」「危険はないか?」このような言語パターンであるからこそ、製品やサービスのクォリティが保たれるわけです。「失敗しそうだけど、まあいいか」は許されません。状況に応じて、使い分けられることをNLPでは目指します。
言葉は、その人の五感(脳や神経)の使い方を無自覚的に表しています。主に視覚を使う人の言葉を分析すると、動詞は「見える」「思い浮かぶ」「ひらめく」などが良く使われます。修飾語としては「美しい」「鮮やか」などを使います。主に聴覚を使う人は、「聞く」「考える」「響く」などの動詞。「うるさい」「響き」などの修飾語が良く使われます。主に身体感覚(味と匂いを含む)を使う人は、「感じる」「刻む」などの動詞。「重い」「だるい」「痛い」などの修飾語が良く聞かれます。このような違いをNLPでは「代表システム」の違いと呼びますが、各タイプの持っている価値観を言葉で表現しているとも言えます。
視覚優位の方は、色、形などに関する美的価値を重んじます。聴覚優位の方は、音の大きさや高低などの音声的調和に関する価値を重んじます。それと同時に興味深いのですが聴覚優位の方は思考をよくするので、論理的価値を重んじます。体感覚優位の方は、肌触りや温度など身体感覚に価値を置き、さらに感情的な事柄にも価値を置きます。
その人の言葉は、何に価値を置いているかを如実に表しています。しかも、ほとんどの場合無自覚的な潜在意識で価値づけしています。つまり、視覚優位の方は美的価値にフォーカスするため、視覚情報に注意が向きやすく、視覚に関する言葉が必然的に多くなります。そして相手の言葉から観察できる、これらの使う五感の違いからくるクセにちょっと合わせるだけで、対人関係はかなりスムーズになります。
その人の使う言葉が、その人の世界観を表していることは、ここまでの話でお分かりだと思います。そこで、相手の言葉使いに少し合わせると、相手の世界観を共有することができます。通常、人は自分の事を分かってもらえていると感じる時に安心感を実感しますので、世界観を共有することがなぜ大事なのか、相手の言葉を尊重して使うことが信頼関係構築の第一歩となります。反対に、「別に悪い人じゃないのに、何か理屈っぽくて、この人とは噛み合わない」と感じている場合、あなたは体感覚優位で、相手は聴覚優位でコミュニケーションを取っているかもしれません。このように、言葉をどのように選ぶかは、私たちは普段意識せず、ほとんど潜在意識によって行われています。潜在意識に任せるのではなく、必要に応じて自分で言葉を選んで使うことによって、人間関係改善に大きな力を及ぼします。
また、言葉は相手の潜在意識の可能性の扉をも開きます。イチロー選手が数年前に、日米通算4000安打を記録した時、試合後の記者会見で語った言葉です。
「こういう時に思うのは、別にいい結果を生んできたことを誇れる自分ではない。誇れることがあるとすると、4000のヒットを打つには、僕の数字で言うと、8000回以上は悔しい思いをしてきているんですよね。それと常に、自分なりに向き合ってきたことの事実はあるので、誇れるとしたらそこじゃないかと思いますね」
このイチローの言葉は、まさに私たちの潜在意識の扉を開き、失敗を恐れずにチャレンジする勇気を与えてくれる言葉ではないでしょうか。